大江健三郎研究ノート

ノーベル賞作家の大江健三郎を考えるブログ。自分なりに作家・大江健三郎を考えたことの考察というか研究ノート。

大江健三郎の小説で最も読者が多い『個人的な体験』


 大江健三郎の小説で最も読者が多いのは『個人的な体験』だろうと思う。

 息子の障がい者の大江光をモデルにした本人の体験を私小説的に書きたかった大江健三郎はあえて『個人的な体験』という小説の題名を用いたのだろう。

 大江健三郎の小説のタイトルのネーミングセンスの良さは際立っているのだが、『個人的な体験』という小説も大江健三郎の息子の大江光の体験から得た作家自身の大いなる教訓が含まれている。

 
鳥(バード)は、野鳥の鹿のようにも昂然と優雅に陳列棚におさまっている、立派なアフリカ地図を見お ろして、抑制した小さい嘆息をもらした。制服のブラウスからのぞく頸は腕に寒イボをたてた書 店員たちは、とくに鳥(バード)の嘆息に注意をはらいはしなかった。夕暮が深まり、地表をおおう大気か ら、死んだ巨人の体温のように、夏のはじめの熱気がすっかり脱落してしまったところだ。

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川端康成の自殺と大江健三郎の立場


 ノーベル賞作家で日本で始めて受賞したのは川端康成である。

 川端康成はガス自殺の悲劇で三島由紀夫の自決に衝撃を受けて手がつかなかった精神状態でもあったらしい。

 同時代の文学の出来事となれば三島由紀夫の自決と川端康成の自殺というのは衝撃を受けた人は多かったように思う。

1968(昭和43)年にノーベル文学賞受賞以降は小説らしい小説をほとんど発表していなかった川端康成は、1970(昭和45)年の三島の自刃直後の現場を目の当たりにして以来、しばらく床に伏せるなどを繰り返していたが、それまで見られなかった言動をするようになり、1971(昭和46)年4月の東京都知事選では秦野章候補の応援弁士に立ち、美濃部都知事を激しく攻撃するなどもしていた。

1972(昭和47)年4月16日、川端は鎌倉の長谷の自宅に岡本かの子全集の推薦文を書きかけのままで外出、14:40、自宅から100メートルほどの海岸通からタクシーで1月7日に買ったばかりの逗子の小坪にあるマンションへと向かった。15:00には逗子マリーナクラブハウスに到着、4階の自室へと上がり、水割りを少し飲んだ後、17:30に布団をすっぽりかぶって、長さ1.5メートルのガス管をくわえ、18:00に絶命した。

22:05、マンションの警備員が川端の自殺を発見、マンション住民のガス臭いという苦情でマンション中を調べたが、その時には川端の部屋まで調べておらず、川端の長谷の家のお手伝いから連絡が入り、川端がマンションに在室かどうかを確認する際にわかったのだという。

玄関にドアチェーンがかかっていたが、ガス臭がしたためにチェーンを切断して川端が発見された。 川端は三島の自刃、都知事選の応援など以外でも10月に京都で予定していた日本ペンクラブ主催の日本学シンポジウムの準備に奔走、睡眠薬を多用して疲れきっている様子であったという。

川端康成自殺 1972(昭和47)年4月16日

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ヘイトスピーチから考える大江健三郎批判


 最近のヘイトスピーチは過激化している。

 ブログで日教組批判や『朝日新聞』批判や日本共産党批判では飽き足らない。

 大江健三郎批判で大江健三郎は文化勲章を辞退した悪文家であって国賊であって皇室を貶めて反日ばかりで日本の悪口をいうだけで許せないが、もっと許せないのが在日特権で日本を支配する在日朝鮮人である!

 ということで新大久保にまでネトウヨが出てきて在日特権を許すな!で愛国者宣言でヘイトデモ。

 さすがに大江健三郎を国賊と批判しているような右翼からもこれではいただけない、と思っているのはもちろんあるだろう、とは思う。

 ――正直、どっちもどっちではないかと…


 下品な言葉遣いの中心にいると自覚してますけど、彼らは外国人というだけで「出て行け」と叫ぶ。全然違うと思っています。


 人間って、暴力的なものを本能的に持ち合わせていると思うんです。彼ら、ヘイトのコールをすると、快感らしいんですね。ただ、こっちは差別をしている個人に絞って「差別をやめろ」と罵倒しているのであって、属性への罵倒ではない。


 ――なぜ右翼の山口さんが、「ネット右翼」とか「ネトウヨ」と言われる在特会のデモに反対するんですか?


 あれは愛国者じゃないでしょ。人の痛みも考えられない差別主義者は真の右翼ではない。日本が大好きで誇りに思っているなら、なぜ他の人に配慮できな いのか。


 在日コリアンもニューカマーも日本を好きでいてくれて、そこで商売しているのに、罵倒したりバカにしたりする。韓国人もアメリカ人も、国や故郷を誇る思いは一緒です。そういう尊厳を踏みにじる行為が理解できない。だから目を覚まさせたい。「差別して何が愛国者だ」と。愛国心の暴走を止めたいんです。


 ヘイトスピーチに「愛国者じゃない、日本の恥」 カウンター右翼青年が叫ぶ理由

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