大江健三郎の文化勲章の自体は大きく大江健三郎を批判して反日作家で国賊で日本を貶める売国奴の所業であるという敵を作る言動でもあったらしい。

 今まで大江健三郎を知らない人までが大江健三郎の反日ぶりが目に余る!ということで大江健三郎が嫌いになった事件でもあったようだ。


■文化勲章受賞を拒否した大江健三郎氏とは

 本年度のノーベル医学・生理学賞に京都大学の山中伸弥教授が受賞され、先日華やかな 授賞式が執り行われたことは誠に喜ばしく、日本人として誇らしいことであった。テレ ビの映像を見ていると、山中教授の胸には先日受章された橘をかたどった文化勲章が美 しく輝いていた。これを見ていて思い出したことがある。1994年にノーベル文学賞 を受賞した大江健三郎氏のことである。

ノーベル賞受賞者には文化勲章が与えられるこ とが習わしであるが、あろうことか大江はこれを受けなかった。 そしてその理由は「民主主義に勝る権威と価値観を認めない」と勲章そのものを否定して 受章を拒否したのである。一方フランス政府からのレジオンドヌール勲章は受章している。

大江は1935年生れであるから、華々しく「太陽の季節」で芥川賞を受賞して、文壇に 登場した1932年生まれの石原慎太郎氏と同年代で、石原と同じく23歳で芥川賞を受 賞している。

私も文学は大変好きで、注目された大江の作品を何冊か相当忍耐を重ね、 読んだことがあるが、大変難解で理解しづらかった。サルトルの実存主義から強く影響を 受けたといわれているが、門外漢の私にはよく判らない。しかし大江の文体は独特で難解で悪文であるという評価もある。

■ひとりよがりの大江文学の価値は何か

 話を大江のノーベル賞受賞と文化勲章受章拒否に戻したい。

 難解にして独善的な大江の作品にノーベル賞受賞の価値が本当にあるのかどうかは判らないが、 ノーベル文学賞の存在の是非について論議されている昨今、それなりの受賞価値があったのであろう。ただ私見ではあるが文学は一人よがりであってはならない。

 その点私は大江文学に共感できないのである。1994年大江が川端康成氏に続く二人目のノーベル文学賞受賞晩餐会における基調講演は、川端の演題「美 しい日本の私」をもじった「あいまいな日本の私」であった。あいにく手元に両講演の内容がないのでどのようなことを話したかは不明であるが、自分を芥川  賞に推薦してくれた大先輩の演題を、もじるとは真に礼を失しているのではなかろうか。

 一方彼は前述のとおり、戦後の民主主義者である自分は天皇陛下から頂 く文化勲章は受け取れないとして受章を拒否した。彼が民主主義国と思っている中国や北朝鮮にそれに該当する勲章があるのかどうかしらないが、もしそうなら 嬉々として受け取るのであろう。

 余談であるが、文化勲章を辞退した方々は過去大江以外に陶芸家河井寛次郎、洋画家熊谷守一、女優杉村春子の三氏がいる。ご 存じのとおり河井、熊谷両氏は名利に恬淡とした人で、自分はそのような章に値しない、どうかそっとしておいて欲しいというのが辞退の理由。

 杉村氏は、自分 は長生きした、もっと受章にふさわしい方々がおられたのにそれを差し置いては心苦しいとの理由であった。

 いずれも民主主義がどうとか、天皇陛下から頂くの がどうとか政治、思想的なものではなかった。「民主主義的でない日本」、「あいま いな国日本」が嫌いなら自分の理想とするあいまいでない国へ大江氏は即刻亡命されてはどうであろうか。

 2012年12月19日 「大江健三郎論」
 個人的な意見では大江健三郎は何もノーベル賞が欲しいから小説や文学を書いたわけでもない。

 川端康成もノーベル賞欲しさに『雪国』を書いたわけでもないのだが、文化勲章を辞退して日本を否定する態度に今まで大江健三郎を知らなかった人までが大江健三郎の反日とか国賊売国奴ぶりは社会悪として糾弾しなければならないことだ、ということで批判が高まった事件であったことを自分も知っている。

 川端康成はノーベル文学賞を得た後も日本の皇室から文化勲章もいただいたし、川端康成の小説はそれほど難解な作品でもなくて日本のあるがままの美しく、読みやすい化粧のような女性的な美文でもある。

 反面、大江健三郎はフランスの哲学者のサルトルの影響を受けて思想や哲学を表現する難解な知識人向けの文章で読む人を選ぶ。

 大衆からは大江健三郎の文章は悪文であって、悪文に加えて反日言論に余念なし!で文化勲章否定の態度が実に不愉快ではないか?という批判が逆巻き、大江健三郎はノーベル文学賞を返上して、そんなに嫌いならば北朝鮮に行くべきだ!という批判も逆に高まってしまったのは皮肉でもある。

 大江健三郎の難解な思想を表現する悪文も文化勲章を否定して日本を貶める売国奴のような下劣な振る舞いと保守右翼から糾弾された後には大江健三郎が何か発言すると国賊作家とか反日の頭目で赤い悪魔のようだ、で理解が難しいまま突き進んではいるのが痛いといえば痛い。

 ノーベル賞や文化勲章に関しては大江健三郎と川端康成の明暗というべきだろうか?