大江健三郎賞の最後は『さようなら、オレンジ』に選ばれた。

 専業主婦が書いた作品が最後の大江健三郎賞を飾った優秀作ということになる。


 第8回大江健三郎賞(講談社主催)は岩城けいさん(43)の『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)に決まった。受賞作は翻訳され、海外で出版される。同賞は今回をもって終了するという。

 岩城さんは大阪市生まれでオーストラリア在住。今回の受賞作で昨年、太宰治賞を受けてデビューした。


  受賞作はオーストラリアに移り住んだアフリカ移民の女性と日本人女性の交友を通して、言葉の通じない異国で生きる困難と希望を描く。


 大江さんは、文芸誌 『群像』5月号の選評に〈私がいま新しい(若い)書き手たちに示したいと思う規範を、次つぎ達成〉〈かつてこの国の小説になかった人物像〉などと賛辞を連ねた。岩城さんは「無名の新人の本を読んでいただいていること自体が驚きでしたし光栄でした。最上の褒め言葉をいただいた」と、喜びを語った。


 同賞は平成18年に創設。過去1年間に日本で刊行された文学作品を対象に、大江さんが一人で選考してきた。第4回受賞作である中村文則さん(36)の『掏摸(スリ)』は英訳後、米の文学賞候補にも選ばれた。


 最後の大江健三郎賞に「さようなら、オレンジ」

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