大江健三郎は同性愛の問題を積極的に書く作家である。
最近のレイト・ワークの『水死』でもウナイコという女性の同性愛者が登場するが、大江健三郎は同性愛者ではない。
結婚した相手は大江ゆかりという女性であって映画監督の伊丹十三とは義兄弟の関係になったわけだけれども、大江健三郎は同姓愛者の人権やジェンダーの問題には積極的な作風の作家だったりする。
大江健三郎にいわせると同姓愛者の差別事件は部落差別や在日韓国・朝鮮人の民族差別のようなものであって、同姓愛差別にも敏感な作家でもあって、出口がない同性愛者の人の救済のような話を小説でロール・モデルのように提示しているといえばいえる。
大江健三郎が『性的人間』や『万延元年のフットボール』などでエロチックな性と同姓愛の問題を積極的にテーマにしたのはどうも大江健三郎が性的少数者の人権に敏感で部落差別や民族差別のように性的少数者を排除するのは間違っているし、文学や小説で自分が復権させるのが大切なことだという考えが強いからではないか?
日本の作家でも谷崎潤一郎や三島由紀夫は同姓愛的なテーマで小説を書いてもいたが、大江健三郎の場合、しこから一歩、踏み出して同性愛者の人権というか左翼進歩派のような筆致で小説を書いてきた作家でもあるのだろう。
大江健三郎はLGBTのような性的少数者ではない、のだが、LGBTのジェンダー問題には理解を示す優れた作家だと私には思えてもくる。
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