大江健三郎の『セブンティーン』といえば今も単行本に第二部の『政治少年死す』は未収録になっている。

 それだけ大江健三郎の作品でタブーになっている作品であるが大江健三郎の政治的な発言を考えれば極めて重要な作品でもある。

 冒頭で語られる17歳の危うい思春期の精神の暗黒だけではなく、性的なリビドーに突き動かされている男性の心も大江健三郎は17歳で自分の肉をつかんでみたくない?でエロティックに表現もしている。


今日はおれの誕生日だった。おれは17歳になった、セヴンティーンだ。家族のものは父 も母も兄も皆な、おれの誕生日に気がつかないか、気がつかないふりをしていた。それで、 おれも黙っていた。夕暮れに、自衛隊の病院で看護婦をしている姉が帰ってきて、風呂場で石 鹸を体じゅうにぬりたくっているおれに<17歳ね、自分の肉をつかんでみたくない?> といいにきた。

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