右翼保守派といえば西尾幹二が大江健三郎をを批判していたことで大江自身も困った相手だと思っていたらしい。

 大江健三郎自身も西尾幹二から批判を浴びていることを率直に『自分の木の下で』で述べている。

 金芝河からは日本は原爆を落とされて当然ということで手厳しい批判を大江健三郎が受けたことを語っているし、西尾幹二や本多勝一からは原爆のことを大江健三郎は語る資格はない、という批判も浴びたらしい。

 西尾幹二にいわせればさしずめ従軍『慰安婦』とか反原発とか原爆問題で売国活動にいそしむ大江健三郎はノーベル賞作家に該当しない国益を考えない空虚な理想論者という批判でもあったのだろう。



 ―大江さんは被爆の問題にもながく取り組んでこられましたね。

 大江 僕は、ノーベル賞の後もまず韓国へ行きましたが、そのずっと前にもソウルで金芝河(キムジハ)さんとテレビで討論 したことがあります。

 そのとき、彼は、日本人がアジアで犯した犯罪を認めないで、ヒロシマのことをいうのは権利はない、と言った。韓国の民衆はそう思って いると。僕は、彼らの考えとしてそれは正しいと思いました。

 それを認めた上で、例えば、韓国で若しんでいるもと慰安婦の女性と、広島で被爆して苦しんでい る人との間で和解が成立するならば、一緒にたたかうということはありうるといいました。僕と金芝河さんもその意見の違いを認めた上で、お互いにこれから力 を尽くすことができるのではないかというのが、僕の言いたいことだった。しかし、金芝河さんはじつに激しく雄弁に批判したし、僕がトボトポ自分の考えをの べて、討論は終わった。

 僕は、結論は出ないけれども、大切なことだと思い、金芝河さんが僕を批判しているフィルムをあるだけ全部放送してもらったのです。 僕は、そのことで右からも左からも批判を受けました。

 たとえば『朝日ジャーナル』の本多勝一氏。もう一方から批判した人が、西尾幹二氏(「新しい歴史教科書」作りの中心人物の一人)です。大江は原爆につい て発言することをやめろと。

 韓国人に、原爆が落とされたことを良いと思っていることをいわせたという点で、広島について発言する権利はないという。僕は、 韓国に、原爆が落とされて良かったと思っている人はいまなおいると思います。同時に苦しんでいる被爆者と一緒にやっていこうとしている人たちも確実にいる ことを知っています。

 互いにいくらかでも前進するために、日本はまず侵略戦争を正式に謝罪する。それから、慰安婦の人たちに謝り、お金を払うこともしなくてはならないと思います。


 僕は日本の戦争犯罪を認める
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